シンデレラは硝子の靴を

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何処へ行くでもなく。


沙耶は日が落ちる寸前の大通りを、とぼとぼと歩いていた。





『お前はもう…忘れたの?』



『約束』





いつかの石垣の悲しげな問いかけが思い出されて、胸を掻き乱す。




ただ単に、迎えに来るというだけの約束だと勘違いしていた。



でも実際はそうじゃなくて―。






「―ごめん」




気付けば、口から零れ落ちる謝罪。





ちゃんと覚えてなくて。




「ごめんなさい…」




自分ばっかりが苦しいと思ってて。




人目を憚る余裕もないまま、熱いものが込み上げる。




それが滲んでは手で拭い、払うけれど、次第に追いつかなくなってくる。





―ごめんなさい。




飛び込む勇気すら持ち合わせていない。



こんな臆病な自分で。




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