シンデレラは硝子の靴を
子供の頃の方が、自分はもっと強かったような気がする。
子供の頃の方が、もっと純粋に物事を見れた気がする。
あの頃の自分だったら、今どうしただろう。
どうやって動いただろう。
こんな風に逃げ回っていただろうか。
それともちゃんと向き合っただろうか。
正解は勿論―。
鳩尾にぐっと力を籠めて、涙を止めると、沙耶は目尻を拭った。
「私らしく、ない。」
今からでも、間に合うなんて甘いことは考えてない。
でも、まだやれることは残っている。
沙耶は肌身離さず持ち歩いていた手帖の感触を、鞄の上から確かめた。
せめて、石垣が築いてきたものを、失うことが無いように。
これ以上石垣が、傷付かなくて済むように。
自分にやれることが、まだある筈だ。
風が吹いて、街路樹から落ち葉がハラハラと落ちた。