シンデレラは硝子の靴を
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寒風吹き荒ぶ中。
「お願いしますっ!!!」
秋元の本家の玄関前で、沙耶は頭を下げ続けていた。
「ご近所に迷惑だから、帰っていただけませんか?」
年配の小間使いが困ったようにそんな沙耶を見つめる。
「お願いします!父の遺産の中にあった筈なんです。どうか伝えていただけませんか?それだけ返していただけないか…」
「ですから、、大奥様は追い返せと仰られてるんです。」
「せめて、手放さないで欲しいと…」
「それ以前の問題でして―」
二人の押し問答が続いた所に―
「―何してるの?」
着物姿の中年女性が現れ、きつい眼差しを、小間使いと頭を下げたままの沙耶に向ける。
「それがですね、こちらの方が―」
「ご無沙汰しています、、叔母さん…」
顔を上げた沙耶と目が合うと、女の顔付きが益々険しくなった。
「あんた…ぬけぬけとよく来れたわねぇ。ほんっと図太い根性してるわぁ。」
憎憎しげに吐かれた言葉に、小間使いの方が縮こまった。