シンデレラは硝子の靴を
「二度と顔見せるなって言ってあったよねぇ?何しに来たの?」



「わっ」




叔母は、沙耶のことを上から下まで舐めるように見回すと、ドン、と突き飛ばした。



門に背中を打ち付けて、その痛みに沙耶は顔を顰める。




「すみません…ただ今日はお願いがあって…、、父の遺産の中にミュアンの株があったと思うんですが…これから何があっても、、どうかそれを手放さないで欲しいんです…」




父の保有率は決して多くはないが、それが無ければ、坂月が半分を獲得するのは難しくなる筈だった。




言葉と一緒に零れる息が白い。




「はぁ???なんでそんなのあんたなんかに指図されなきゃなんないのよ?ふざけるのも大概にして欲しいわ!図々しい。」




無論、叔母は目をつりあげながら、沙耶を押しのけて、中へ入ろうとする。





「待って!待ってください…」




それを沙耶は必死になって呼び止めた。





「何でもしますから…だから、、、だからお願いしますっ…」




その言葉に、叔母の足がぴたりと止まる。





「何でも…?」




沙耶はその後ろ姿を縋るように見つめる。





「へぇ…」




振り返った叔母の唇は、ずるそうに歪んでいた。
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