シンデレラは硝子の靴を
なんでも今夜、三ツ星ホテルで催されるパーティーがあるらしいのだが、そこで働く高校の頃の友達が、急用でどうしても休みを取らなければならない状況になったらしい。
大きな催事に、ウェイトレスの人数が足りないと困るホテル側は、代わりを探して来い!と友達に詰め寄った。
その流れで、大学に行っていない沙耶に白羽の矢が立ったというわけだ。
申し分ない程の給料だったので、沙耶も快諾した。
仕事内容も酒や飲み物の注文を取ったり、空になった皿を片したり、食事を出したりする程度の簡単なものだと聞いている。
壁に掛かる、友達から借りた黒のスーツを眺めながら、確か髪は結い上げるんだったな、と思い出した。
―もう少し、眠るか。
眠たくて、徐々に瞼が下がっていっていた沙耶は、直ぐにまどろみ始める。
今日は、土曜日だから、駿の弁当を作らなくて良い。
バイトも夜以外はない。
いつもなら夜中コンビニに行って、朝帰宅。駿の弁当を作り、その足で本屋か薬局でバイト。
だからこんなにゆったりとした気分で居られるのが、小さいけれど、プチ贅沢のようで、折角だから楽しもうと、沙耶は布団の中にもぐりこんだ。