シンデレラは硝子の靴を
諒の自信に満ちた表情を見ながら、坂月は思い出していた。






「秋元家の腐りきった内部を叩きのめしたら―」






この世界に、敵わないと思う人間が。





「お前に全部くれてやる。」





沙耶の他に、もう一人居たこと。




この二人と居ると。




自分が必死になって掴んでいた物が、ちっぽけに思えてくる。




どう足掻いたって自分じゃ勝てないな、と思い知らされる。




「ふっ…」




呆れにも、諦めにも取れる感情が、笑いとなって零れ落ちた。







「何笑ってんだよ。」





諒がむっとした顔で言うので、坂月は首を小さく横に振った。





「どうやら、立ち止まれたみたいなので。」






橙に染まった流れる雲を見上げて。





光と影の織り成すコントラストの意味は何なのかといつも考えていたな、と思った。



最初は主張し合った挙句、打ち消し合っているのかと結論付けていた。






だが。





「違うのかもな…」





自分だけに聞こえる声で呟く。




本当は。




どちらの存在も、互いに依存しあって生きているということなのだろうか。




例えば、諒と自分も同じように。




今は、その答えで正解のような気がした。



それでいい、と思えた。
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