シンデレラは硝子の靴を
「よかっ……」
震える指先で、感触を確かめるように裾に触れた。
「!」
そうして気付くのは、仄かな紅茶の香り。
―もしかして。
よろよろと立ち上がると、沙耶は辺りを見回す。
そして、走り出した。
―もしかして。
靴を履くのもまどろっこしくなって、裸足で玄関を飛び出し、向かった先は、裏の竹林。
あの頃、自分が良く泣いていた道。
約束の場所。
そこに、見える人影は―。
「石垣っ!!!!」
大声で呼ぶと、その場に佇んでいた石垣が弾かれたように振り返った。
「っはぁっ……」
全速力で走ったせいで、肩で息をしながら、石垣の傍まで行くと、沙耶は立ち止まる。
二人の間を、風が抜けていった。