シンデレラは硝子の靴を
「私はっ…」



どんなに地面ばかりだけしか見えなくても。


強くあろうと思っていた。


志だけは高く持とうと決めていた。




誰にも弱さを見せずに。


頼らずに。





だけど実際は。




「強くなんか、ないの…」




弱くて弱くて仕方ない。



昔の記憶を思い出すことすら、出来ないくらいに。





「だから、、逃げたの。だから、、」





認めることもできなかった。




「…もういい」



「―!」





打ち消しの言葉と共に、石垣は振り向き様に沙耶を強く抱き締めた。


小さな風を巻き込んで。





「もう、いいから。」







押し付けられた胸に、強く香るアールグレイの香り。



それがひどく涙腺を刺激する。







「…参ったな。これじゃ折角の決意が揺らぐ。」




再び泣き出した沙耶の身体に、石垣の声が、響く。





「沙耶。」





名前を呼ぶと、そっと肩を掴んで身体を離し、見つめた。





「もう一回だけ、答えて。」




そう言って、沙耶の肩から腕までをするりとなぞって手を掴み、石垣がその場に跪く。
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