シンデレラは硝子の靴を
「とにかく!あゆみがクビになってないだけマシだし!私は日々の生活が苦しいんだから、バイト探さないと!」



気持ちを切り替えて、沙耶は家路を急いだ。



直ぐに馴染み深いアパートが見えてきた所で、大家が外に出ているのに気付いた沙耶は挨拶をしながら近付く。




「おはようございます」




「おはよう、秋元さん…」




パンチパーマのおばさんの、少しおどおどした様子に、沙耶は首を傾げる。




「具合でも悪いんですか?」



「いえ、、違うの…あのね、、秋元さん…!」




大家は迷っているようだったが、意を決したようにがばっと顔を上げた。




「今週中に、家を出てって欲しいの。」



「-え?」




余りに衝撃的過ぎて、沙耶は言葉を飲み込めない。




「ごめんなさいね。日にちさえ教えてもらえれば、家賃は日割り計算しておくから。それじゃ…」



唖然とする沙耶を置いて、大家はそそくさと家に入ってしまう。




―今週中に、家を出て行く。




クラリと眩暈がして、沙耶はよろめいた。






「……やってくれたな、あんにゃろう…」



今日の今日で、ここまで手を回すなんて。



―一発殴っただけじゃ、すまないわね。




流石に悔しくて、沙耶はぐっと唇を噛んだ。




母と弟を支えていけるのは、もう自分しか居ない。



行く当てなんか、最初からない。
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