シンデレラは硝子の靴を
誰も居ない部屋に入ると、沙耶は畳みの上にぺたんと座り込んだ。



ただでさえ、何もない家だ。


荷造りは簡単。



母の入院する病院から近い上、家賃3万という好条件に惹かれて決めた場所だが、幸い、追い出されることには慣れている。




「うん、大丈夫。なんとかなる。」



沙耶は敢えて口に出して言い聞かせ、萎えそうな自分を奮い立たせた。




そして、洗濯や掃除を一通り済ませると、母親の着替え等を揃え、病院に向かった。




道中フリーペーパーをもらって、新しい仕事を物色しながら半額惣菜パンをかじる。




「うーん、、どれも時給が安いなぁ。」




ペラペラと捲りながら、どれも月々の支出に合わずがっかりした。




「フロアレディとかだとやっぱり値段良いよね。」



身体だけは売りたくないと思っても、ついつい目がいってしまう。



そうこうしている間に病院に到着し、フリーペーパーを鞄に仕舞った。



1年近く通えばもう慣れたもので、沙耶は直ぐにエレベーターに乗り、本館とは別棟(べつむね)へ向かう。


「こんにちは」


いつものようにナースステーションに挨拶すると、看護師達が寄り集まって何か話している所だった。
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