シンデレラは硝子の靴を
待合い室には、沙耶達の他には誰も居なかった。



看護師はそれを確認すると、端っこの席に座るようにと手で合図をし、自分も対面に座った。




「少し、、言いにくいことなのですが…、その…滞納している医療費のこと、なんですが…」




おもむろに口を開いた看護師から出てきた内容は、今の沙耶にとってはいつにも増して重い。




「あの、それは、、ちゃんと、お支払いしますから。。。」




このことで、沙耶は頭が上がらない。


毎月支払ってはいるのだが、いつも少し遅れてしまう。


本当だったら追い出されても仕方ないのに、病院側の厚意で、猶予されていた。




「いえ、そうじゃなくて…その…先程いらっしゃった方が―我が病院ともその、、縁の深い方らしく―その滞納の話をどこからか知って…」





だが看護師は歯切れ悪くそう言うと、言葉に詰まってしまう。




「何ですか?何て言われたんですか?」




逸る思いで、沙耶は先を促した。




恐らくは―。








「び、貧乏人は追い出せ、と。」




看護師の口から出た予想通りの言葉に、沙耶はふっと短い溜め息を吐く。





「本当は直々に院長が伺う所なのでしょうが、、今日は不在だったので上にはまだ上げておりません。。。石垣様もそれで良いと仰られていました。」




「?どういうことですか?」




ここに来たのが石垣本人だったのか、石垣グループと名乗った坂月だったのかは置いといて、何故わざわざ保留じみた真似をするのか。
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