浮気彼氏から奪うオトコ。
それから聞かされたのは、本当に声が出なかった。
ただ泣きそうになる秀を見れば、誰かに言う気もなくなった。
「……ごめんな」
最後に呟いた声は、俺には届かず、秀が屋上を出て行っても、中々動けなかった。
「…馬鹿なヤツ」
どっちが馬鹿なんだろ…。
秀か、そのオンナか…。
「誰にでも優しくすっから、そうなるんだよ」
俺は功ってヤツに、今さっき言われたことを全て話す気もない。
とてもじゃないけれど言えなかった。
「…記憶喪失か」
俺は小さく言って、俯いた。
「厄介ごとに巻き込まれたなぁー…」