浮気彼氏から奪うオトコ。
馬鹿だよな、って声が聞こえて、あたしは唖然としてしまう。
「廣クンのお母さんの話…、ずっとしてくれなかったね」
「したくなかったんだよ。妃鞠が浮気をしている俺を見て、
嫌いだって言ったんだからな」
「え?」
すねたように言う廣クンは、柵に持たれかかると、あたしの手をそっと離した。
「浮気を嫌う妃鞠に、本当の理由を言っても、信じてくれねぇと思った」
「本当の理由…?」
「母さんが浮気をしているのを見て、それが当たり前だと思ってたんだよ」
苦笑する廣クンを見て、胸が痛む。
「なぁ…妃鞠」
「ん…?」
「妃鞠だけはもう苦しい思いをさせたくねぇんだ。
だから…アイツが好きなら、素直になれよ」
「…なんで?」