浮気彼氏から奪うオトコ。
「…泣くなよ」
そういって、妃鞠の腕を離した。
俺は少しだけ妃鞠から離れると、腕を広げた。
「別れたなら、来いよ」
―…別れたなら、もう気軽に抱きしめてあげれる。
―辛いときは、傍にいてやれるんだ…。
妃鞠はまた涙を流しながら、少しずつ俺に歩み寄った。
そして俺の腕の中におさまった。
「…ひ、ひっ…ヒク…」
「…」
頭をそっと撫でてやると、妃鞠は大声で泣き出した。
結構うるさいけど、初めて見た。
―こんなにも苦しそうにする妃鞠は、きっと強くなれるんだろうな…。
10分くらい泣くと、鼻をすすりながら、俺を見上げた。