浮気彼氏から奪うオトコ。
「おいっ、どういうことだよ!」
『あれ…貴方誰?』
廣クンがかのんに電話をしているのを、あたしは遠い目で眺めていた。
「何でもいいから、何があったんだよ!」
『そんなの私にもわかんないよっ!でも…どこにもいないの』
「クソッ…また1人で抱えてんのかよ」
『…蒼斗、探しても意味ないのかも知れない』
「はぁ?」
『置手紙にも書いてあったように、探さないでって…。
だから探しても見つからないところにいるんだよ』
「…そうだよな」
あたしは蒼斗クンの行きそうなところに走っていた。
後ろで廣クンが呼んでも、走る力は緩まなかった。
それはあの丘の上。
きっと蒼斗クンなら―…。
そこにいたのはかのんだけだった。
「か、かのん」
「妃鞠っ…」