浮気彼氏から奪うオトコ。
家に着くと、廣クンはあたしの腕をゆっくりと掴んだ。
「考え込むなよ」
「うん…」
「じゃあ、また明日。学校でな」
「ん」
廣クンに手を振ると、家に入る。
お母さんはまた仕事でいないのか、部屋の中は真っ暗だった。
「あれ…」
でも玄関に靴が置いてあった。
それは男の人で、まさかと思った。
「……お父さん?」
リビングの電気をつけると、テーブルの椅子に誰か座っていた。
あたしは恐る恐る近づくと、懐かしい人がいた。
「…妃鞠、ごめんな」
「え…?」
海外出張していたお父さんが帰るなんて、珍しい。
1年に1回も帰れそうになったはずなのにどうして―…?