浮気彼氏から奪うオトコ。
お父さんは廣クンを睨んでいるようだった。
廣クンはフッ…と小さく笑っていた。
「もし妃鞠が嫌なら、外国へ連れて行っていいです。
そんな日は絶対に来ませんが。
だから―妃鞠を連れて行かないで下さい」
「…」
こんなにも必死になる廣クン、あたしは見たことがない。
ずっと浮気を重ねて、あたしをほっぽったくせに。
オンナが近寄ってくるからとか。
そんな言い訳ばっかだったのに。
―それなのに…。
「俺がそんな簡単に渡すと思っているのか?
たった1人の娘なんだぞ?」
「…知ってます。小さい頃から貴方が妃鞠を愛していることは」
廣クンはその場に座り込むと、深くお辞儀をしていた。