浮気彼氏から奪うオトコ。
「…ちょっと家を出れる?」
「あ。うん…、お父さん後で説明するから」
「…気をつけろよ」
外はもう朝を迎えていた。
あたしは小さく頷いて、家を出た。
「…」
「…」
お互い何も話さないまま、ずっと歩き続けた。
蒼斗クンが握り締めてくれた手のひらは、ずっと温かかった。
「あの、さ」
ぴたりと蒼斗クンが立ち止まった場所は、やっぱり丘の上だった。
いつになく真剣な表情は、いなくなってしまう証拠だった。
「…俺。前に言ってたでしょ?妃鞠ちゃんが幸せになったときに、伝えたいことあるって」
「うん…言ってたね」