浮気彼氏から奪うオトコ。
あたしの前に立つと、
「散々遠回りをしてきた気持ちでした。
お互いその気持ちに気づきたくなくて、
元カレ、元カノとよりを戻そうとまでしていました。
ですが―…俺は彼女が好きになっていたんです。
今では誰にも渡したくないほどに」
そこまで言えば、お父さんは何も言わなくなった。
深く頷いただけで、リビングに行ってしまった。
去り際に小さく「妃鞠を頼んだ」と呟いていた。
家の中はすっからかんで、あたしも自分の荷物を手に取った。
「んじゃ妃鞠は、蒼斗の家にでも行くのか?」
「うん…そうなんだけど。学校辞めちゃうから」
「じゃあお父さんが手続きしておくから。さぁ幸せ者はとっとと行く」
いつになく優しいお父さんは、険悪な表情から笑みが浮かんでいた。