浮気彼氏から奪うオトコ。
功クンが連れて行ってくれたのは、綺麗な花が咲く丘だった。
「わぁ…、この大木おっきいねぇ」
「うん。ここは俺の大事な場所なんだ」
少しだけ寂しそうに言う功クン。
その表情は、何かを待っているようだった。
「ここで何かあったの?」
「…直球だよね。妃鞠ちゃんは。だから…アイツも」
「え?」
「俺の彼女は、妃鞠ちゃんの彼氏に裏切られて。
それで俺との思い出だった、この場所で死んだ」
「……そんな、嘘だよ。きっと…。
廣クンがそんなこと」
「嘘だったら、俺もよかったよ。
早く悪い夢から覚めたかった。
でも…」
言葉を詰まらせて、何も言わなくなってしまった。
あたしは功クンの震える肩に触れた。