浮気彼氏から奪うオトコ。
功クンはくしゃりと顔を歪め、辛そうに俯いた。
「……何で君は1人の人すら、幸せに出来ないんだ…」
「は…?」
「悲しませていたら…本当に大切なもの。
見えなくなるよ…?」
廣クンの胸倉を功クンは掴んで、
ぱっと離した。
「俺は恋愛感情がねぇんだよ…」
その声にあたしは過去を思い出しかけていた。
「妃鞠に出会っても…初めは特別な思いなんてなかった。
俺は愛されることがなかったから、
オンナは全ておんなじヤツに見えてたんだ」
功クンに殴られたせいか、廣クンは少しだけよろけた。
あたしの腕はずっと離さなかった。
「妃鞠は…こんな俺の傍にいた。
きっと辛い思いもさせたんだと思うけど…、ずっといてくれたんだ」