浮気彼氏から奪うオトコ。
好きだ、好きだ―…。
どんなに言いたかったんだろう。
どれほど今まで、傷つけないように、
キスをしなかったんだろう―…。
そう。
俺がキスをしなかったのは、妃鞠が汚れていくように見えたからだ。
俺のせいで、
妃鞠が―…、そう考えると怖くて出来なかった。
でも…、放課後の10分間だけは…。
妃鞠との時間が欲しかった。
そうじゃなきゃ、俺は本当に壊れてしまうから―…。
初めてキスをしたとき、俺はずっと忘れられなかった。
妃鞠があんなにも可愛くて、そっと閉じた瞳が、俺を信じているようで。
―2度と手放すもんかって…、そう決意した瞬間だったから。
だから…妃鞠との放課後にするキスは、凄い大事だった。
別れを告げられてから、俺等はキスをしなかった。
そりゃそうだろうけど…、俺の心は痛くて仕方なかった。