浮気彼氏から奪うオトコ。
震えている妃鞠に気がついて、もう1度やり直そうと決意した。
恋愛感情が分からない俺に、いっつも傍にいたのは妃鞠だけだった。
「…やり直せないよ」
俺の声を遮って言った妃鞠の声は、凜としていて―…。
すっげぇ綺麗にも見えたんだ。
何もかも吹っ切ったようで―……。
まさか演技だったなんて、俺は気づくはずがない。
結局、皆俺の事は最初からどうでもよかったんだ…。
そう思うと、妃鞠がいなくなった後、俺はしばらく動けなかった。
目の前に見えるのは、妃鞠との思い出だけで。
それは綺麗な思い出のように見えて、とても儚いようにも思えた。
「ごめん、妃鞠……。辛い思い出ばっかにして…」
最低な俺を受け入れるヤツなんて、この世にはいない。
だったら俺は…、俺は―……。