龍乃一味のカオスな学園生活
さて、夕城世継ぎの催促ではないとすると、一体何をしに来たのか。

「さくら、確か今の天神学園にゃ侍が何人かいるっつったよな?琴月のが二人に、夕城のがお前も含めて二人…」

龍之介はそう言って、テーブルの上に風呂敷包みを置く。

長物だ。

「そのうち刹那って奴は、久遠の二刀の内の『月蝕』を受け継いだって聞いてる。未熟者がもう少し腕を上げてから、もう一振りの『日蝕』も譲るんだろうが…武と琥珀だったか…あの二人は『菩薩』と『四季』を早くも受け継いでるっていうじゃねぇか」

龍之介は珍しく神妙な顔だった。

「まだ早ぇ。たかが14かそこらのガキ達が、夕城指南役の愛刀や、四季・色彩銘刀を受け継ぐ力量に足りてるとは思えねぇ」

風呂敷包みをフワリと解くと、中から二振りの刀が出てきた。

「"駄作"夕映(ゆうばえ)と"駄作"韋駄天(いだてん)、俺の作刀だ」

夕映は、夕城の大奥様である夕城 こはく(ゆうしろ こはく)の愛刀、四季・色彩銘刀の秋の刀、『黄昏(たそがれ)』を模倣したもの。

勿論龍之介が聞きかじった知識だけで鍛えたものなので、黄昏には大きく劣るが、代わりに高い技量を必要とする孔雀の愛刀・四季よりは癖のない使いやすい刀に仕上がっている。

韋駄天は、刀としての強度を保ちつつも刃の厚みを薄く鍛えたもの。

代々小柄な善の家系の剣客にも扱い易いように、刀身も若干短め、軽量化してあり、その名の如く韋駄天のような剣速を出す事が出来る。

「使う使わねぇはヒヨッコどもの勝手だ。使い続けるも、腕を上げてからまた菩薩や四季に持ち替えるのも勝手。俺が勝手に鍛えた刀だからな。強制はしねぇ」

龍之介は二振りをさくらに預ける。

「奴らの靴箱にでもぶち込んどいてやってくれや」

龍之介、刀は靴箱には入らないぞ。

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