この恋をつないで
家に帰ると、母が勇ましいほどに胸を張り手を腰にあててキッチンに立っていた。ダイニングテーブルの椅子に腰掛けてそんな母の後ろ姿をぼんやり眺めていた。

「何贅沢言ってんのよ、あんたみたいなのもらってくれるって言ってんだから」


天ぷらを揚げながら母は少し顔をしかめて言った。


「結婚…こんな感じで決まっていいのかな…」
という私の呟きに対する答えだ。



「恋愛結婚が必ずしもいいとは限らないわよ〜。ほら、何だっけあんたと高校の時同じクラスだった…白石…何だっけ?まぁいいわ、あの娘だって駆け落ち同然で…」

長い母のありがたい言葉も私の耳には入らず宙をさまよっている。


私には忘れられない人がいる。


結婚する前にもう一度彼に会ってみたい…なんて考えてみる。


もう随分前の話でそれを未だに引きずっているのはおかしいけれど。


心の何処かで引っかかり私の心を時々キュンとさせるのだ。






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