この恋をつないで
初恋の君
カフェのガラス越しに街ゆく人達が足早に歩いている。
テーブルの向こう側には、今日も相変わらずの無表情な顔。


「時田さん…式の招待状が出来上がったと連絡がありました」

「そうですか」

「はい」


「………」



はい、会話終了。


沈黙が痛い。


コーヒーカップを手にしながら飲むのを躊躇ってしまうほどに沈黙。


共通の話題もないし出会ってもう半年近く経とうとしているのにこの会話力。


私を苗字にさん付けで呼ぶ彼は名は空川架路(そらかわかける)。

まさかの私の婚約者だ。

身長182㎝。
切れ長の目が少し冷たさも感じさせるけれど、色素の薄い瞳に引き込まれそうになる。
職業は公務員であり、この部分に母は特に飛びついていた。

私、この人とやっていけるのかしら。


どうしてこの人は私との結婚を決意したのだろう。


よくわからない。


でも、結婚って就職先と同じでよりよい条件のところへ嫁ぐのが結局いいわけだよね。

経済力はもちろんあった方がいいし。

子どものことを考えれば相手の遺伝子も気にならなくない。





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