「幽霊なんて怖くないッ!!」
『おーい、切るぞぉー』
「あっ、待ってくださいっ!! 居ます居ますっ!! ちゃんと繋がってますっ!!」
『んだよ、居るのかよぉ……出んなよコラ。 面倒臭いだろーが』
「……」
このまま切ってしまおうか。
無かったことにしてしまおうか。
そう思ってしまうくらいに、私はすっかり呆れ返っていた。
遠い遠い親戚だとしても、こんな人が親戚だとは……。
『八峠さん、そんなこと言わずに。 ね?』
さっきの人の穏やかな声が聞こえてくる。
……何故あの人が八峠さんじゃないんだろう。 あの人が八峠さんなら、どんなによかっただろう。
そう思いながら、私は一人 小さく息を吐き出した。
『ったく、しょうがねぇなぁ。 おい、双葉 杏。 聞こえてるか?』
「……聞こえてます」
『お前の悩みはわかった。 とりあえず秋の親父さんに札を多めにもらって家に帰れ。 帰った頃にこちらから連絡する』
「え? あ……いや、え……?」
『以上だ』
その言葉のあと、電話はすぐに切れてしまった。