「幽霊なんて怖くないッ!!」
油断
………
……
…
八峠さんの言っていた、廊下の突き当たりの部屋へと入る。
亡くなった八峠さんのお母さんの部屋……というか、ご両親の部屋だ。
殺風景なリビングとは全然違い、部屋の荷物はそのままの状態で残されているらしい。
夫婦が使っていただろうダブルのベッド、綺麗に片付けられている本棚、テーブルには当時は最新だっただろうパソコンがあり、その隣にある化粧台にはたくさんの化粧品が並んでいて、そこには携帯電話の充電器も無造作に置いてある。
……これはきっと、お母さんが亡くなった日のままなんだ。
綺麗に掃除はされているけれど、それでもここは、あの日のまま時間が止まっている……──。
「……これは動かせないよ、八峠さん」
お父さんとお母さんの部屋は、このままじゃなきゃダメだよ。
私が勝手に動かしていいものなんかない。
絶対に、ダメだ。
「……うん。 この部屋は、このままにしておかなくちゃいけないと思う」
だから私はすぐに部屋を出て、八峠さんの居るリビングへと戻った。