「幽霊なんて怖くないッ!!」
……気持ちよさそうに眠っている八峠さんのそばに座り、その顔を眺める。
他に着替えがあるかどうかを聞こうと思ったけれど、起こしていいのかどうか迷ってしまった。
普段迷惑ばっかりかけているのに、ここで起こしたらまた迷惑になるよね……。
でも、やっぱり服は着替えたいし……。
だけど八峠さんが自分から起き出してくるのを待った方がいいかな?
いや、でも……いつ起きるかわからないし、それにお腹もすいてきた。
これからどうすればいいのかわからないから、やっぱり起こした方がいい?
だけど、でも……。
と、色々なことが頭の中を巡り、決断することが出来ずにいた。
うーん……と唸りながら八峠さんの顔を見つめていたら……。
「……お前、うるせーよ」
「うわっ!? す、すみませんっ……!!」
……眠たそうに瞼を開いた八峠さんの機嫌の悪い声が低く静かに響く。
うぅ、怖い……。 ほんと、ごめんなさい……。
「服はどうしたんだよ」
「あ、あのっ……お部屋の中、荒らさない方がいいかなって思って……!!」
「好きに着りゃいいじゃん」
「いえっ……あの部屋は、あのまま残しておくべきだと思うのでっ……!!」
「あー、じゃあハクに頼め。 お前の部屋から着替えを持ってきてもらえばいいんじゃね」
あ、そうか。
薄暮さんなら私の部屋にパッと入ってパッと出てくることが出来るから、薄暮さんに頼めばいいんだ。
……いやいやでもっ、それって下着とかも持ってきてもらうことになるわけですよねっ!?
さすがにそれはっ……!!
「お前、『薄暮さんに下着見られるの恥ずかしい、どうしよう』とか思ってるだろ?」
「なっ……!?」
「誰もお前の下着なんかで興奮しねぇっつーの。 ったく、ガキが色気づきやがって……」
「わ、私は子供じゃないですよっ……!!」
「酒もタバコも出来ない年齢なんだからガキだろうが」
「お酒くらい飲めますからっ!! タ、タバコだって吸えるんだからっ……!!」
私は子供じゃない。 子供扱いなんかされたくない。
その一心で、私はテーブルに置いてあった八峠さんのタバコの箱に手を伸ばし、取り出したタバコをくわえて火をつけた。