「幽霊なんて怖くないッ!!」


……私はまだ何も話していない。

なのに八峠さんは、すべてわかっているかのような口調だった。




「杏ちゃん、電話終わった?」

「あ、はい……一応は」

「なんて言われたの?」




そう言いながら戻ってきた秋さんに、八峠さんから言われたことを話すことにした。




「えっと……まだ何も話していなかったんですが、『お前の悩みはわかった』と言われました。
それから、秋さんのお父さんにお札を多めにもらって帰るようにと」

「なるほど」

「……八峠さんは、どうして私の悩みがわかったんでしょうか?
それに、秋さんのお父さんにお札を……って、私がここに居ることを知ってたような口振りで……」




……電話を通じて透視でもされてたんだろうか?

そんな風に思ったら、なんだか急に背中の辺りが寒くなってきた。


そんな私の疑問に答えてくれたのは、目の前で笑う秋さんだった。




「親類からの電話のほとんどは『カゲロウの血』が絡むから、杏ちゃんの悩みもすぐにわかったんじゃないかな」

「……あ、そっか……『何かあったら八峠さんに』って言われてるくらいだから、八峠さんはこういう電話に慣れてるのかも……」

「うん」


「でも、お札のことは……アレはまるで私が神社に居るってわかってるような言い方でしたよ?」

「八峠さんは現在生きている『カゲロウの血』のことを全員把握してる。
俺たちがどういう生活を送ってるか、どの程度の力の持ち主なのか、なんとなく知ってるみたいだよ」




……なるほど。

実際に会ったことはないけれど、八峠さんは私のことを知っていて、危険が迫った時に神社に逃げ込むことも知っているんだ。

こうやって私が連絡したことは、彼にとっては想定の範囲内だったのかな……。


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