「幽霊なんて怖くないッ!!」
「この程度かよ、つまんねーな」
「……っ……」
──……私の前に立った八峠さんが、オサキの攻撃を右腕で防いだ。
ううん、防いだわけじゃない。
私が受けるはずだった攻撃を、八峠さんの右腕が受けたんだ。
攻撃を食らった右腕からは、血がポタポタと流れ出している。
「八峠さんっ!!」
「うるせーよ黙ってろ。 すぐ済む」
「でもオサキはっ……!!」
「いいんだよ、コイツはニセモノなんだから」
ニセモノ。
そう言った八峠さんは、近くに置いてあった 封の開いた段ボール箱を勢いよく投げつけた。
その時、中に入っていた大量の紙が宙を舞い、数枚がオサキの体へと貼りついた。
これは、お札(フダ)……?
「なんだよ、叫び声も無しか? この札は死ぬほど痛いんだから叫び声を聞かせてくれよ。 ほんっとにつまらない奴だな」
『……ナゼ、ニセモノ ダト ワカッタ……』
「オサキは俺の言葉に従って秋のところへと行った。 そのオサキが、俺に無断で戻ってくるはずがないだろう?」
『タッタ、ソレダケ ノ 理由デ……』
「それだけじゃねぇよ」
血が流れ続けている部分を左手で押さえながら、八峠さんは小さく言った。
「アイツはもっとムカつく顔してる」
『……オレ ニハ ワカラヌ話ダ……』
「あぁそうだな。 お前なんかにわかってたまるかってんだ」
『……ワカラヌ……ワカラヌ……ワカラヌ……』
……同じセリフを繰り返すオサキは……ううん、オサキの形をしたソレは、お札に押しつぶされるように段々と小さくなっていく。
『……次ハ 殺ス……』
その言葉を最後に、オサキの形をしたソレは姿を消した。
「次も俺が勝つよ」
小さな声で言った八峠さんは、腕を押さえた状態のまま 笑っているようだった。