「幽霊なんて怖くないッ!!」
「秋さんに会いたい……また、笑ってもらいたい……」
「うん」
「色々な話をして、二人で笑って、ずっと一緒に、生きていきたかったのにっ……」
八峠さんにすがりつき、泣きじゃくる。
そんな私を八峠さんは受け入れ、優しく抱きしめて、私の想いを ちゃんと聞いてくれている。
……その八峠さんが、私の耳元で静かに言葉を放った。
「今から秋の霊が来る。 どんな姿で現れるかはわからないが、それが秋の最後の姿だと思え」
「……っ……」
「俺は秋を殺す。 見たくなかったら、目を閉じてるといい」
秋さんの霊が、ここに……それはきっと、カゲロウに操られた状態の秋さん……。
八峠さんのお父さんの霊が お母さんを引きずり込もうとした時と同じように、秋さんの霊は、私をソチラへと引きずり込もうとしてくるんだ……。
「秋さん……」
ゆっくりと目を閉じて、意識を集中させる。
……居る。
秋さんの霊が、50メートルほど後ろに居る。
普段の私は、目で視て幽霊の姿を確認することしか出来ないけれど、今は違う。
秋さんの霊がどこに居るのかがハッキリと分かり、そして、私に向けられる殺意も感じ取れている。
……秋さんは、私を殺しに来たんだ。
彼はカゲロウに操られ、私を引きずり込みに来た。
見た目は秋さんと同じなのに、それはもう、秋さんではない……。
(……なのに私は、秋さんだと思ってしまう……)