「幽霊なんて怖くないッ!!」
……私たちを生かすため……。
「あなたは怪我をしているし、冷静さも失っている。 そんな状態で敵に向かっていくのは 死にに行くも同然です」
「……」
「あなたを失ったら全て終わりなんですよ。 『カゲロウの血』の連鎖は止まらない。 あなたたちの一族は、また何百年と苦しみながら生きていくことになるんです」
……薄暮さんの言葉を聞いた八峠さんが、また舌打ちをした。
「何百年と苦しみながら生きていくのは、お前だけだろ」
「……」
「『カゲロウの血』も その家族も、そりゃあ苦しみはするだろうが、『カゲロウの血だから仕方ない』『カゲロウの血はそういう運命だ』と納得して最期を迎えるはずだ。
お前が現れなければ俺だってそうだった。 自分が狙われることも、両親が死んだことも、全部ちゃんと受け入れて生きていただろうよ」
ゆっくりと立ち上がった八峠さんが、薄暮さんの胸ぐらを掴んだ。
冷たい視線を向ける八峠さんと、そんな彼を無表情のままジッと見つめる薄暮さん。
再び聞こえた舌打ちのあと、八峠さんは小さな小さな声で言った。
「全部お前のせいだよ。 お前が現れなきゃ納得して生きていけたのに、お前のせいで納得出来なくなっちまった。
……双子の家が火事になったのも、秋が死んだのも、全部お前のせいだ」