「幽霊なんて怖くないッ!!」


……彗さんは、事情を知っている八峠さんと一緒に過ごしてきたけど、カゲロウのことは知らないままに亡くなったんだ……。




「普通は何も知らないままに一生を終える。 それが『カゲロウの血』だ。
だから彗は俺と一緒に居るハクのことも同じ『カゲロウの血』だと思ってたよ」

「……どうして、真実を話さなかったんですか……?」

「面倒をかけたくない。 巻き込みたくない。 カゲロウのことで苦しませたくない。 ……理由は色々あったよ」


「……そっか……そう、ですよね……」




何も知らないまま過ごしていれば『仕方ない』と諦めることが出来る。

でも、カゲロウのことを知ってしまったら……その時はもう『仕方ない』なんて言葉では済ませられない。


少なくとも、私はそうだ。


もしも今 瀕死の状態となったら、私は憎しみや恨み、憤りを感じながら死んでいく。

何も知らなかった時には持ち得なかった感情だ。




「誰かを憎みながら死ぬと、その憎しみは死んでからもずっと消えることはない」

「……幽霊になって、他人に影響を及ぼす……」

「あぁ、普通の霊よりも相当強い霊──悪霊となる。
今からここに来る霊たちもそういう奴らだ。 理由は様々だが、負の感情を持ったまま生涯を終え、今はカゲロウの操り人形だ」




……八峠さんと薄暮さんは、今からその霊たちを相手に戦うんだ……。

私はその様子を、結界の中から見守るだけ……。




「あ、あのっ……私っ……私も何かお手伝いをっ……!!」

「死んでも死ぬな」

「……え?」


「つまりは『生きろ』ってことだよ。 何が何でも生き延びろ。 絶対に死ぬな。
さっきも言ったが、お前が死んだら秋が悲しむし、俺もツラい。 だからお前は生きろ。 それが出来りゃ、他に何も言わねーよ」


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