「幽霊なんて怖くないッ!!」
………
……
…
「じゃあ、また」
「はい。 ほんと、いつもいつもすみません……」
「いえいえ、またいつでも」
にっこりと笑う秋さんに手を振り、鳥居の外へと出る。
結界の外には何体かの霊が居るけれど、大量のお札を持った私には近づいてくることはない。
大丈夫。
この状態なら襲われることはない。
他の人と同じ、普通の状態だ。
「八峠さんのこと、あとで色々教えてねー」
「はーい」
そんなことを言いながら手を振り合い、私は石段をテンポよく駆け下りた。
神社から私の家までは、徒歩10分。
住宅街をどんどん進み、坂の上にあるのが私の家だ。
家自体は古いけれど、眺めは抜群。
夕暮れには遠くの海がキラキラと輝き、夜は眼下に広がる街の明かりが美しい。
父も母も仕事で居ないから一人で過ごすことが多いけれど、秋さんのお父さんが張ってくれた結界のおかげで、家の中では幽霊を気にする必要はない。
家の中から美しい街並みを見る。 まさにそれは私にとっての癒しであり、安らぎの時間だった。