「幽霊なんて怖くないッ!!」


「あれっ……?」




……家の前に、二人の男の人が居る。


一人は紺色のスーツ姿で、礼儀正しく門の前に立っている。

そしてもう一人、灰色のパーカーを着てジーンズを穿いている男の人は、気怠そうに地面に座り込んでいた。


どちらも20代後半……だろうか。

パーカーの人の方が少し年上に見えるけれど、同じと言われれば同じに見えるから、よくはわからない。


それにしても、ミスマッチな組み合わせだな……と思いながら、恐る恐る声をかける。




「あの……何かご用でしょうか?」




そう聞いた私に、スーツ姿の男の人がにっこりと笑いかけた。






「双葉 杏さんですね。 突然押しかけてしまってすみません」

「……あの、あなた方は……」

「僕は薄暮(ハクボ)。 先程電話で話したんですが、わかりますか?」




そう言われ、電話をかけた時のことを思い出す。

この声、この穏やかな口調……間違いなく、八峠さんの電話に出た最初の男の人の声だ。


ということは……灰色のパーカーのこの人が、八峠さん……?




「双葉 杏。 『帰った頃にこちらから連絡する』と言っただろう?
何故俺たちが来る前に帰っていない? 俺を5分も待たせた罪は重いぞ?」

「う……」




……この声は、間違いない。

ここに居る彼は、間違いなく八峠さんだ。


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