「幽霊なんて怖くないッ!!」
……嵐の前の静けさ。
その言葉を受け、私は小さく頷いた。
確かにここ数日は、幽霊による襲撃がまったく無くて とても静かだった。
八峠さんの家の結界は、幽霊たちの戦いの直前から今までずっと外しっぱなしだ。
なのに襲ってくる幽霊は居ない。
時々 無害な霊が迷い込んでくることはあったけど、そのまま放置していれば自然と去っていく。
そんな霊だけしか居ないのが、ここ数日の様子だった。
「ま、警戒を解くつもりはねぇから安心して学校に行けよ。 いざとなったら校内に突入するし」
「……不法侵入で捕まりそうですね」
「あぁそうか、それがカゲロウの狙いか。 幽霊の力じゃ俺に勝てないから、人間の手で俺を処罰する、と」
「……いや、なんで真面目に受け答えしてるんですか。 ほんっとに、八峠さんって変な人ですよね」
「なんでだよ、色々な予測を立てるのは基本だろ? 世の中 何が起こるかわかんねーんだから、もっと色々考えながら行動しろっつーの」
……まぁ、確かにそうだ。
今はこうやって冗談っぽいやり取りをしてるけれど、八峠さんの立てた予測が当たる可能性も無くはない……かも?
いやでも、さすがにそれは無いよね……。
「えっと……とりあえず、不法侵入にならないように気をつけてくださいね?」
「おう、学校の外からお前をストーキングしとくよ」
「それはそれでどうかと思います」
なんてことを言い合いながら、私たちは笑い合った。
……ここ数日で、私と八峠さんは随分と親しくなったように思う。
一緒に料理をしたり、庭に出て土いじりをしてみたり、こうやってソファーに座って一緒にコーヒーを飲んだり、二人で過ごすことがとにかく多かった。