「幽霊なんて怖くないッ!!」
……連絡って、電話が来るものだと思っていたのに、まさか本人が訪ねてくるとは……。
「あ、あの……中へどうぞっ……」
「すみません、お邪魔します」
薄暮さんはやはり礼儀正しく頭を下げ、八峠さんはあくびをしながら立ち上がり、のろのろと後ろをついてくる。
……こんな人が、本当に凄い人なんだろうか……。
「おい、双葉 杏」
「は、はいっ……」
「俺はコーヒー。 ハクには水だ」
「え……」
コーヒーと、水……。
二人の関係性はよくわからないけれど、それはあまりにも……。
「双葉 杏さん。 僕が用意しますんで、八峠さんと話しててください」
「そ、そんなっ……私がやりますのでっ……」
「大丈夫、任せてください。 キッチンをお借りしますね」
ぺこりと頭を下げた薄暮さんは、手際よく準備を始めた。
「おい、双葉 杏。 ここに座れ」
「……」
「早くしねぇと帰るぞコラ。 俺は忙しいんだからな」
……上から目線で命令口調。
確かに私の方が年下だし、相談をするのも私だ。
だけど、あまりにも高圧的すぎる。
こんな人に電話なんて、するべきじゃなかったかもしれない。
「座れっつーの」
床をビッと指差した八峠さんに従い、私は床の上に正座した。
八峠さんはソファーの上でくつろいでるのに、なんで私は正座を……。