「幽霊なんて怖くないッ!!」
──敵は、男子トイレの出入り口の外に居る。
氷雨くんが張っただろう結界に阻まれ、こちらには入ってこられないらしい。
「いい結界ですね。 誰に教えてもらったんですか?」
「え? あ、えっと……母に……」
「お母さんにも力が?」
「えぇ、まぁ……。 つーか、ほんとなんなんですか……アンタは、いったいなんなんだ……」
「それは、後ほどきちんと説明しますので」
背中しか見えないから表情はわからないけれど、薄暮さんはきっと冷たい目をしてる。
だって、彼の言葉はどこか冷たい感じがしたから。
……薄暮さんは今、幽霊を倒すために感情を無くした。
霊の数は3体。 だけど、きっと1分もかからずに倒してしまうはずだ。
「結界を消すので、背後からの不意打ちに気をつけてください」
「はぁ!? せっかく張った結界なのにっ!?」
「強すぎる結界は、さらに強い霊を呼び寄せるだけですよ」
その言葉と共に、薄暮さんは小刀で結界を斬りつける。
直後、シャボン玉が割れるように、小刀で斬りつけたところから結界は消えていった。
……そして、3体の幽霊がすぐにトイレの中へ侵入してきた。
彼らが目指しているのは氷雨くん。 ……氷雨くんを殺すことしか考えていないらしい。
幽霊たちはすぐ近くに居る薄暮さんを避けるように飛び、物凄い早さで氷雨くんへと近づいてくる。
「くっそ、毎度毎度っ。 なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだっつーの!!」
氷雨くんは声を荒らげながら構えるけれど、でも、彼が動く前に既に勝負はついていた。
「幽霊に狙われるのはイヤだけど、素通りされるのは腹が立つ」
──薄暮さんは、3体の幽霊を小刀で斬り、あっという間に消滅させた。
その後 薄暮さんは、小さく息を吐き出したあとに私たちを見た。
「ひとまず移動しましょう。 誰かに見られると厄介です」
その言葉のあと、私たちは再びテレポーテーションで空を飛んだ。