「幽霊なんて怖くないッ!!」
「あ、おじさん。 朝ぶりです」
「誰がおじさんだっつーの」
にこやかな氷雨くんに対し、八峠さんは相変わらずの面倒臭そうな顔だ。
「八峠さん、双子は?」
「ミカさんに頼んできた。 あの人の家、双子が今 住んでる家と割と近いんだ」
「そっか、よかった」
「あの人のおかげで、前よりも警護がしやすくなった。 こっちでなんかあった時はミカさんが双子を預かってくれるってさ」
「……でも、カゲロウのことは……」
「言ってないよ。 だけど『カゲロウの血』を守りたいっていう思いは同じだから」
そう言ったあと、八峠さんはソファーに腰を下ろしてから氷雨くんを見た。
「『呪われた家』のことを話せ。 お前が知ってる限り、全部だ」
「俺の家のことは、おじさんには関係無かったんじゃ?」
「俺の獲物が お前の一族を狙ってるかもしれない。 そう聞いたからだよ」
「なるほど。 じゃあ、そっちも話してくださいね?」
「何をだよ」
「超人的な力を持ってる薄暮さんの正体とか、カゲロウって奴のこととか。 それがフェアってもんでしょ?」
ニシシッと笑う氷雨くんは、八峠さんの正面の床に腰を下ろした。
彼の言葉を聞いた八峠さんは とにかく面倒臭そう……。
「俺らの話を聞くと、お前は余計に狙われるかもしれねぇよ? 死ぬかもしれねぇよ? それでもいいのか?」
「だからー、俺は死にませんって」
「あ、そ。 まぁ俺は話してもいいと思ってるけど、それはハクの了承を得てからだな」
と言いながら、八峠さんは薄暮さんに視線を送る。
それを受けた薄暮さんはどこか困ったような顔をしながらも、『大丈夫ですよ』と微笑んだ。