「幽霊なんて怖くないッ!!」
………
……
…
「俺の家は、もう何百年も前から幽霊に狙われてるらしいです。 狙われるのは、決まって『幽霊が視える人』だけ。
長生きする人も居ますけど、大体は10代で生涯を終えてるっぽいです」
床の上であぐらをかく氷雨くんは、床をジッと見つめながら言葉を繋げていく。
私と薄暮さんはキッチンでコーヒーの用意をしながら、それを聞いていた。
「こっちの一族で幽霊が視えるのは、今は多分 俺とお袋だけだと思います。 あとは全部死んじゃったって聞いたんで」
「そうか、こっちも似たようなもんだよ。 今は6人。 少し前までは、7人だったんだけどな」
少し前までは、7人。 その言葉に反応して顔を上げた氷雨くんは何かを言おうとしたけれど、何も言わずにまた下を向いてしまった。
「……俺たちを狙っている奴の名前がカゲロウだ。
カゲロウは俺たちの遠い遠い先祖でな、呪いを行うために俺たちを身代わりにしてんだよ」
「あぁ『人を呪わば穴二つ』ですか。 お袋がよく言ってます。 ウチもそうなんだろうって思ってますよ。
あ、じゃあそのカゲロウって奴が、こっちの一族も狙ってるってこと?」
「まだわかんねーけど、そうかもしれない」
「なるほど。 こりゃまたマンガみたいな話ですね」
「でも現実だよ」
そう話してる二人のところにコーヒーを届け、私は八峠さんの隣に腰を下ろした。
薄暮さんは八峠さんの斜め後ろに立って、静かに耳を傾けている。
「おじさん、ちょっと質問いいですか?」
「おじさんじゃねぇよ、俺は八峠」
「八峠さん。 八峠さんはカゲロウのことを殺そうとしてるんですよね?」
「おう」
「でもカゲロウは遠い遠いご先祖様でしょ? その人が生きてるっておかしくないですか?」
「別におかしくねぇだろ、カゲロウは不老不死なんだから」
「あ、なるほど、不老不死なら……って、えぇ!? 不老不死ッ!?」