「幽霊なんて怖くないッ!!」
「早速だが、双葉 杏」
「……毎回フルネームはやめてください。 私のことは杏でいいです」
「双葉 杏。 お前は秋のように飛ばすことは出来ないんだよな?」
……この人、私の話は全然聞いていない。
秋さんのことは『秋』って呼んでるのに、なんで私は毎回フルネームなんだろう……。
「おい、へ・ん・じ」
「……飛ばせません」
「じゃあ飛ばせるようになれ」
「……はい?」
「だーかーらぁ、自分のことは自分で守れるようにしとっつーの」
自分のことを、自分で。
……それはよくわかっているけれど、それが出来るなら とっくにやっている。
「……私は、力が弱いので……」
「『カゲロウの血』が弱いわけねぇだろ。 使い方を知らねぇから死ぬ。 それだけだ」
「そ、そんなこと言われてもっ……」
「生きたいんだろ? だったらやれ」
……確かに私は生きたい。 生きていきたい。
『カゲロウの血』を持ちながらも、寿命を全うしたい。
だけど……、
「……私、秋さんに色々教えてもらってるけれど、出来ないんです。
幽霊は私の背中を押すことが出来るけど、私は幽霊に触れない。 逃げることしか、出来ないんです」