「幽霊なんて怖くないッ!!」
………
……
…
その後、家に帰ってきた私は嫌がる八峠さんの手を引いて両親のところへと連れて行った。
八峠さんは私を守るためにそばに居てくれるけど、泊まる場所が無い。
ウチには使ってない部屋があるから、そこに八峠さんを泊めようと思う。
私のことを守ってくれてる人を野宿させるわけにはいかない。 八峠さんに何かあったら寝覚めが悪い。
……などなど、色々なことを両親に話した。
途中、家の結界やお札の話などもすることに。
現在 家には結界が無く、私はいつ襲われてもおかしくない危険な状況だ。
何故 結界を外したのか? その理由は、いつになく真剣な顔の八峠さんが話してくれた。
住宅街の中にポツンとある結界は、弱い霊は遠ざけるけれど 強い霊は逆に引き寄せてしまう。 強い霊に襲われないために結界は解除した。 と、八峠さんは淡々と言う。
そして、お札もいつ効力が切れるかわからない不安定な物だから、それだけに頼ることは出来ない。とも言った。
「お父さん、お母さん。 八峠さんが家に居てくれたら、私、凄く心強いんだ。
八峠さんの家に居た時ね、私、今までで1番よく眠れていたよ」
そんな風に言った私を見つめる両親は、神妙な面持ちだった。
そして少しの間のあと、お父さんが『空いてる部屋は好きに使っていいよ』と八峠さんに言った。
「……父さんや母さんには幽霊が視えないから、杏がどういう状況に置かれているかは、正直に言えばよくわからない。
だけど秋くんが亡くなったのは事実だし、八峠くんが『危険だ』と言えば、そうなんだと思う」
静かな口調のお父さんは真っ直ぐに八峠さんを見つめ、そして微笑んでいた。
「杏の命を守って欲しい。 この子が幸せに暮らしていくことが、私たちの望みなんだ」
お父さんのその言葉に、八峠さんは『はい』と返事をしながら小さく何度も何度も頷いた。