「幽霊なんて怖くないッ!!」


………

……




それから数日が経った。


今日は日曜日。

私は、八峠さんと一緒に氷雨くんの家に来ていた。




「八峠さん、双葉ちゃん。 コレがうちのオカン。 見た目は小綺麗にしてるけど、相当なクソババアなんで気をつけてっ」

「こぉら氷雨、アンタは黙ってなさい。 八峠くん、双葉ちゃん、今日は遠いところ わざわざありがとねぇ。
私のことは雨音(アマネ)でいいから、よろしくね」




氷雨くんに紹介された小柄な女性──雨音さんはニコニコしながら私たちに頭を下げた。




「じゃあ、雨音さん。 早速ですけど、幽霊に襲われたっつーのは本当ですか?」

「えぇ、そうなの。 ここ最近は何も無かったんだけどねぇ」

「いつ、どういった形で?」


「昨日の夜、部屋で寝てる時よ。 若い男の人の霊でねぇ、首 絞められちゃった」




……雨音さんは けらけらと笑いながら話しているけれど、幽霊に首を絞められるなんて相当危険な状態だ。

それでも彼女が笑っていられるのは、自分で対処出来るくらいに強い力を持ってるからかな?




「グーパンでその霊を吹っ飛ばしたんだけど、部屋の隅でグニャグニャ動いてたソイツが、『カゲロウ』とか なんとかって言いながら消えていったの」

「……」

「で、今朝になって氷雨に昨日の幽霊のこと話したら、『それ八峠さんが追ってる奴っ!!』って言われて。
私、ぜーんぜん何も聞いてないんだけど、カゲロウって何? 誰? 八峠くんは、カゲロウって奴のこと追ってるの?」




雨音さんのその言葉に、八峠さんはチラリと私を見た。

……けれどすぐに雨音さんへと視線を戻し、静かに静かに話し始めた。




「雨音さんや氷雨が幽霊に狙われているように、俺たちも幽霊に狙われているんです。
そちらでは『呪われた家』と呼ばれていますが、こちらでは『カゲロウの血』と呼んでいます」

「カゲロウの血?」

「極秘なので具体的なことは言えませんが、カゲロウという男が黒幕なのは確かです。
ソイツを捕まえることが出来れば もう幽霊に襲われることはない。 と、俺たちは考えています。……が、カゲロウの行方は今のところ全く掴めていないんです」


< 183 / 285 >

この作品をシェア

pagetop