「幽霊なんて怖くないッ!!」


……カゲロウが私たちの先祖であることや 不老不死だということを、八峠さんは言わなかった。

だから私も何も言わなかったし、事情を知っている氷雨くんも口を閉ざしたままだ。


そんな私たちを見る雨音さんは、目をキラキラと輝かせて笑みを浮かべた。




「極秘ってことは国家が絡んでるのねっ。 オッケーオッケー、彼らもようやく幽霊の存在を認めたのねっ」

「え、あ、まぁ……はい」

「あ、カゲロウって奴は強い力を持った呪術師でしょ? しかも世襲制ねっ。 じゃなきゃ何百年も前から人を狙うなんて不可能だもの。
よし わかった、私に出来ることがあったらなんでも言ってね? 一緒にカゲロウを捕まえましょうっ」




……あれ、なんか……すっごく楽しそう。

普通はもっと怯えたり、驚いたり、疑ったりするはずなんだけど……。




「……この親にしてこの子あり、だな」




ボソリと言った八峠さんは、どこか呆れたように雨音さんと氷雨くんを見てため息をついた。



……まぁ、そんなこんなで。

氷雨くんのお母さん、雨音さんが仲間に加わった。 ……と、RPG風に言ってみる。






「カゲロウってどんな感じの奴なの? イケメン? 美青年? それともダンディー? 美中年?」

「……20代半ば、ですね」

「じゃあ昨日の幽霊と同じくらいねっ。 いいねぇ好みだわぁ。カゲロウさん、夜這いに来ないかしら」


「いやいや、息子の氷雨が居る前で何言ってるんですか。 つーか、カゲロウが来たら多分死にますよ」

「イケメンに襲われて死ぬのなら悔い無しっ」

「……あ、そうですか」




面倒臭そうな顔をしながらため息をつく八峠さん。

雨音さんって、八峠さんの苦手なタイプだもんなぁ……なんて思いながら苦笑いを浮かべる。


雨音さんの暴走発言に能天気な氷雨くんの声が重なると更にキツい。 というか、カオスだ。

雨音さんと氷雨くんの止まらないトークに、八峠さんはとうとう口を閉ざす。


騒がしい二人に挟まれた彼は、眉間にシワを寄せながら 話が終わるのを静かに静かに待っていた。


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