「幽霊なんて怖くないッ!!」


………

……




5分後、ようやく二人の話は 終わりを迎え、八峠さんの『帰ります』という発言でお開きに。




「お茶も出さないで話し込んじゃってごめんなさいね。 これ、よかったらお家の人と食べてねっ」




と渡されたのは、袋いっぱいに入ったミカン。 しかも3袋。

氷雨くん曰く、『親戚の家から大量に送られてきた』のだとか。

1つの袋に20個くらいは入ってるから、相当な量だし何よりも重い。




「いや、さすがに多すぎるんですけど」

「大丈夫、1日3個ずつ食べていけばすぐに無くなるからっ」

「それでも多いし」


「大丈夫大丈夫、もう2袋くらいあげようか?」

「遠慮しときます」




……ということで、私と八峠さんは3袋のミカンを持って帰宅することに。







「……雨音さん、何かあったらすぐに連絡ください」

「えぇ、わかったわ。 またいつでも遊びに来てね」




ニコニコと手を振る雨音さんに頭を下げ、隣に居た氷雨くんには笑顔を見せる。




「氷雨くん、また明日学校で」

「あいよー、俺もなんかあったら連絡するわー」

「うん、私も連絡するね」



そう言って、私たちはお互いに手を振った。







八峠さんは2つの袋をそれぞれの手で持ち、私は右手に袋を持って歩く。

川沿いの道をゆっくりと歩きながら、私たちは静かに話をしていた。




「氷雨くんのお母さん、凄く面白い人でしたね」

「面白いっつーか、すげー疲れた」

「アハハ、そんな顔してましたねぇ」


「気付いてたのなら助けろっつーの」

「イヤですよ、私が疲れますもん」




そんな風に言って笑うと、八峠さんはどこか呆れたようにしながらもようやく笑みを見せてくれた。




「まぁでも、あのくらい溌剌(ハツラツ)としてた方が幽霊は寄って来づらいけどな」

「ですよね。 うん、見習わなくちゃ」

「程々にな? お前がずーっとあんなテンションだったら、俺マジでキツいわ」


「ふふっ、20年後はあんな感じかもしれませんよ?」

「マジ勘弁」




なんて言いながら笑い、私たちはどんどんと歩みを進めていく。






「あ、そういえば この道って……」

「あぁ、この先の橋に、カゲロウが送ってきた霊が居た。 で、ダッシュで逃げた」

「……はい」




……あの日は私が初めて八峠さんの家に行った日であり、そして……秋さんが亡くなった日だ。


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