「幽霊なんて怖くないッ!!」
「……これから、どうするんですか……?」
「ひとまず姿を隠して移動する。 強い霊には丸見えかもしれないけど、全部が全部強いってわけじゃないから、まぁどこかに穴は出来るだろ」
「あ、あの……薄暮さんの力で、場所を移動するというのは……」
「連絡はするけど、アイツに助けは求められないよ。 ハクがここに来るということは、双子が無防備になるってことだ。
双子から離れるのが一瞬だとしても、その一瞬で殺られたら意味が無い」
……そっか。
今 双子を守れるのは薄暮さんだけ……。 私たちは私たちで、なんとかしなくちゃいけないんだ。
「俺はハクに連絡するから、お前は氷雨に連絡を。 狙いは俺たちだろうけど、氷雨たちの方に向く可能性も無くは無いからな」
「……はいっ」
袋を持ちながらも なんとか携帯を取り出して、氷雨くんに電話をかける。
その間に八峠さんは右手で自分の体に結界を張り、もう片方の手では薄暮さんに電話をかけている。
器用というか なんというか、とにかく彼の動きには無駄が無かった。
そんな彼を見ながら、私は耳に当てた携帯電話に意識を集中させる。
コール音が、1回……2回……。
『もしもし双葉ちゃん? 今お袋がメチャクチャ幽霊の気配を感じてるらしいんだけど、そっちは平気?』
「氷雨くん、今その話をしようと思って電話したのっ」
『マジか。 俺なんも視えてないんだけど、相当ヤバい?』
「ヤバいですっ」
どうやら雨音さんは、既に幽霊の気配を感じているらしい。
やっぱり雨音さんはかなり凄い人だ。
『今どこ? 俺そっちに向かおうか?』
「川沿いの道だけど、これから移動するっ」
『マジ? 俺どうすればいい? 八峠さんはなんて言ってる?』
「ちょっと待って。 八峠さんっ」
氷雨くんの言葉を伝えようと、八峠さんに声をかける。
彼はもう既に薄暮さんへの電話を終えていたようで、私の携帯を受け取ってすぐに言葉を発した。
「雨音さんとその場で待機。 何かあったら連絡する」
『ちょ、八峠さんッ──』
「以上だ」
叫び声に近い声が電話の向こう側から漏れ聞こえてきたけれど、八峠さんは構わず電話を切った。