「幽霊なんて怖くないッ!!」
「行こう。 とにかく、人の居ない場所へ移動だ」
「じゃあ、また八峠さんの家へ?」
「だな。 なんとか辿り着ければいいんだけど」
私の手から袋を取った八峠さんは、それ以上は何も言わずに歩みを進めた。
向かうは、八峠さんの家。
……前は走って逃げたけれど、今は辺りを警戒しながらも、歩いて向かっている。
と言っても、いつも以上に早足だ。
気を抜いたら置いて行かれる。 それがわかっていたから、私も早足で八峠さんの後ろを歩いていた。
「……八峠さん、幽霊との距離は……」
「1番近い奴で500メートル、ってところだな。 ムカつくくらいに殺気立ってるよ」
そう言いながらも、彼は笑っているようだった。
……私たちは、カゲロウの作ったゲームの駒。
秋さんが亡くなった日の夜と同じ……今の私たちはゲームの駒と同じなんだ。
そして八峠さんは、駒として扱われている今の状況を楽しんでいる……。
「……八峠さんって、変な人ですよね」
「あ?」
「こんなに大変な状況で笑ってるなんて、変ですよ」
いつも言う『変な人』とは違った意味での、『変な人』。
いつもは冗談を言って笑いながらの言葉だけど、今は違う。
八峠さんは、変だ。
こんな時に笑っているなんて、普通じゃない。
なんで、私と笑って話してる時よりも楽しそうなの……?
どうして、そんなに嬉しそうなの……?
「……死ぬかもしれない この状況をゲームのように楽しむなんて、そんなの……そんなのはっ……」
「俺はさ、カゲロウを殺すために生きてきたんだよ。 そのカゲロウが今までに無いくらい本気で来てる。 だったら俺も本気で応えるしかないだろ?
本気でぶつかった先には、俺たちの運命を変える大きなモノがあるんだよ」