「幽霊なんて怖くないッ!!」


幽霊たちは結界に阻まれ、私たちに近づくことは出来ない。

侵入しようとして結界に触れた幽霊は、おぞましい雄叫びを上げながら消滅していった。


八峠さん曰く、『強力な結界だから触ったら死ぬ』のだとか。

もちろん、生きている人間……私たちに害は無い。

今 リビングを包んでいるソレは身を隠すためだけじゃなく、幽霊を倒すための結界なのだ。







「……相変わらずハクとは連絡がつかない、か」




ソファーに座った八峠さんは、携帯を耳にあてながら小さく息を吐き出した。


……薄暮さんの携帯は、電源が切られているらしい。

それは川沿いの道に居た時から、だ。


あの時、八峠さんの電話はやけに早く終わっていた。

それは薄暮さんに繋がらなかったからだったんだ。




「……薄暮さんも、襲われている……?」

「わかんねぇけど、アイツが電源を切るなんてことは今まで一度も無かった。 何かあったのは事実だろうな」




……何かがあった。

何があったのかは わからないけれど、何かはあったのだ。




「これから、どうすればいいんでしょうか……」

「とりあえずは現状維持。 ハクと連絡がつかなきゃどうしようもねぇよ」

「……」


「悪いが少し寝る。 侵入されることはねぇと思うけど、何かあったらすぐ起こせ」

「……わかりました」




複数の幽霊を倒してきた八峠さんは、力を消耗している。

見た目はいつもと変わらないけれど、相当疲れているのは間違いない。

彼はソファーにゴロンと横になって目を閉じると、すぐに寝息を立て始めた。


そんな彼を見つめながら、私は薄暮さんへと電話をかけてみる。

……けれど、やっぱり薄暮さんの携帯は電源が切られたままだった。


< 190 / 285 >

この作品をシェア

pagetop