「幽霊なんて怖くないッ!!」
「や、八峠さん……薄暮さんって……」
「早速来たぞ」
「えっ……」
ニヤリと笑う八峠さんの視線の先に、黒い影。
アレはさっき私を追いかけてきた幽霊……?
でも、どうしてここに……?
あの幽霊はさっき秋さんが遠くに飛ばしたはずなのに……。
「結界ってのは光に包まれてるだろ? だから奴らからするとスゲー眩しいわけ。
結界の中に居れば確かに安全だ。 だが、結界は逆に奴らを引き寄せるものなんだよ」
「え……?」
「眩しい中に特別なモノがある。 それがわかってるから、結界から出てくるお前を狙うんだ。
結界は神社や寺にある特別なモノ。 それが住宅街の一角に張ってあるんだ、目立って当たり前だっつーの」
そうか……だから幽霊は、常に私のそばに……。
安全のために結界を張ってもらっていたけれど、住宅街の一角で光り輝くから幽霊たちからは目立っていたんだ。
「本当は札も今すぐ無くしたいところだが、今のお前の力はクソみたいに弱い。
霊のことはハクに任せて、まずはこの状況に慣れろ」
「そんな……でも、家の中に居る時だけが私の癒しの時間なのにっ……」
「んなもん知るか。 大体、電話をかけてきたのはお前だろう?
俺の言うことが聞けないのなら、今すぐ死ね」
コーヒーをズズッと飲んだ八峠さんは、チラリと薄暮さんを見る。
その薄暮さんはにっこりと笑ったあとに頷いた。
……二人の間に会話はない。
けれど薄暮さんは、八峠さんの『声無き指示』に従って動き出した。